書きたいけど書けないやつのための物語講座

俺はしゃべりすぎるから、全部読まなくていい。お前が書けると思ったら、すぐ読むのをやめて、書け

物語研究 ルパン三世 カリオストロの城 1 物語の概要

 はじめに

 今日から「ルパン三世 カリオストロの城」を教材に物語を解説していこうと思う。
 まず、ルパン三世 カリオストロの城のネタバレがある事を警告する。カリオストロの城を見たことが無い人やうろ覚えの人が読む事も考慮に入れる。

 次に、俺はルパン三世という作品をあまりよく知らない。かなりのニワカファンなので、間違った事を偉そうに話す事があると思う。
 だが、俺はルパン三世に対する知識を解説したいわけではなく、物語の研究をしたいだけなのだ。真のファンの方にはその点不快な思いをする事があるかと思うが大目に見て欲しい。

 最後に、これからするのは完成された物語の分解だ。よくできた家電製品を分解し、元に戻せるようになっても、その家電製品を作れるようになる訳では無いのと同じようにあくまで、目的地がどこかを知るための特訓だ

 物語の構成を学ぼう

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 映画の構成は小説などと比べて厳密に決められている。映画の上映時間が大体定められているのが理由の一つだ。

 ルパン三世 カリオストロの城は大体90分の映画だ。(実際は100分に近いが)

 映画が始まってちょうど30分後に城への侵入が始まり、その15分後(映画全体の真ん中)で地下に落とされ城からの脱出が始まる。そして更に15分後にルパンは撃たれて城の外に出る。ラストの30分でルパンは城に戻り決着をつける。

 カリオストロの城はどんな話だろうか?

 物語のちょうど半分より少し手前、ルパンとクラリスは二度目の顔合わせをする。その時、芝居がかった調子でルパンは言う。

 「私の獲物は、悪い魔法使いが高い塔のてっぺんにしまい込んだ宝物。どうかこの泥棒めに盗まれてやって下さい」

 「金庫に閉じ込められた宝石たちを救い出し、むりやり花嫁にされようとしている女の子は、緑の野に放してあげる。これみんな、泥棒の仕事なんです」

 また、物語ラストの銭形とクラリスの有名なやりとりにもある通り、この物語はルパンが難攻不落のカリオストロの城に挑み、ヒロインを悪い伯爵から救い出す話と言う事ができそうだ。

 それを前提に、物語を改めて見てみよう。f:id:edtn:20210516160413j:plain

 

 ルパンは稀代の大泥棒である。彼は国営カジノを襲撃して贋金を掴まされた事をきっかけに(また未熟だった頃のリベンジとして)カリオストロの城を狙う。

 偶然クラリスと再会した事で(指輪の紋章を見た事で)過去に彼女に助けられた事を思い出す。ルパンにとっての大きな転換点であり、これ以降ルパンはクラリスを城の外に連れ出す事だけに注力する。

 彼にとっての日常は盗賊の世界であり、彼はその瞬間に悪い伯爵から姫を救い出す英雄に変貌する。そして目的を達成した時、彼はまた泥棒へと戻る。

 

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 第二幕では、ルパンは銭形警部に変装し城の内部に侵入すると、先に偶然入り込んでいた不二子の助言で北側の塔のてっぺんを目指す。最後はやや強引な手段を使ってクラリスが閉じ込められている部屋にまでたどり着く。

 

 クラリスの元へとたどり着いたルパンだが、彼女を助け出せないまま伯爵に見つかり地下へと落とされてしまう。しかし、クラリスがルパンから受け取った指輪は偽物であり、伯爵はルパンを追う事になる。

 話としては、ルパンは単に失敗したようにも見えるが、泥棒を信じろと言うルパンとクラリスの間には信頼関係が生まれていて、後にクラリスを積極的にする。

 ルパンは英雄的人物であり、クラリスを助けようと決断して以降、変化も成長もしない。この物語でその役割をになるのはクラリスで、彼女がこの物語の真の主人公と言うこともできる。

 

 地下に落とされたルパンは銭形と協力し、伯爵のオートジャイロ(ヘリコプターのような乗り物)で再びクラリスの閉じ込められている部屋へと戻る。

 クラリスを救出するまであと一歩まで迫るが、後ろから撃たれて負傷してしまう。

 クラリスは負傷したルパンを庇う。伯爵はクラリスに指輪を取り返してきたらルパンの命は助けると約束し、クラリスはそれに従う。

 銭形が運転するオートジャイロがルパンを助けるが、伯爵は約束を破り逃げるルパンを撃つよう命令する。

 ルパンも伯爵もクラリスに自分を信用するように言うが、それは二人のキャラクターの明確な対比になっている。

 

  ルパンは撃たれて敗走し、偽札作りの証拠をインターポールに提出した銭形は政治的な事情を理由に相手にされず、後任が決まり次第ルパンの担当からも外される事に。

 

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 結婚式の前日にルパンは傷だらけだが目を覚ます。食事をして傷を癒やしつつ、過去の自分の失敗とクラリスに助けられた事を話す。

 一方、不二子はルパンと銭形にそれぞれ情報を提供して行動を促す。

 各々がラストに向けてお膳立てをしつつ、伯爵はつつがなく結婚式を進める。

 

 式の佳境でルパンが登場し、後に式場は大混乱に陥る。

 ルパンはクラリスを連れて式場から抜け出し、伯爵はルパンを追う。

 銭形と不二子は偽札の造幣所へ向かいその実態をカメラに収める。

 

 場外を目指すルパンは道中指輪の謎を解きつつ、時計塔で伯爵に追い詰められる。

 機関部でのアクションの後で、時計の針の上で決着を付ける。

 

 時計塔が崩れて隠されていた財宝が陽の光を浴びた事で物語は終わる。

 伯爵は滅び、クラリスは自由な生活を手に入れた。

 そしてルパンや不二子、銭形は元の生活に戻っていく。

 

 今日はここまでにしよう。機会があればまた会おう。