物語研究 【POKÉTOON】アニメ「ユメノツボミ」【ポケモン非公式解説】
はじめに
今日解説するのはYou Tubeでポケモンの公式チャンネルが公開している
まず、俺が解説するのは物語についてだ。俺のポケモンの知識は皆無と言ってもいい。それでも人を感動させられる事ができるんだからピカチュウってすげぇと思う。
また、俺がこれからやる事に特別な知識はいらない。よければ自分が好きな作品で同じことをやってみるといいだろう。
そして、当然ながら以降の記事は上記動画の致命的なネタバレしかない。
物語の構成
物語はいくつかの型に当てはめる事ができて、その型は数種類しかないという。詳しく知りたいならジョーゼフ・キャンベルで調べてみるのもいいだろう。
映像作品においては、構成は秒単位で定められている事も多く、ストップウォッチを片手に作品のメモを取るのは、創作活動を続けるなら一度はやってみるべきかもしれない。
もし面倒ならば、物語を4つに分割してみて、その時に何が起きているのかを確かめてみるといいだろう。
ユメノツボミのターニングポイント
14分くらいの無料で公開されている映像作品なので、1度は見た事を前提に話を進めさせてもらう。
動画概要欄には物語の冒頭のあらすじが書かれていて、以下の通りである。
ポケモンリーグでチャンピオンになることをゆめ見る少女・ツボミ。 ポケモンといっしょに旅に出たいとママにおねがいしているが、なかなかゆるしてもらえない。 ある日、いよいよがまんできなくなり「ひとりで旅に出てやる!」と決意したツボミは、ポケモンをつかまえに近くの森の中へ。
【3:20】あたりが、物語の4分の1の地点。主人公が日常から、危険な森の中へ入っていく区切りとなるシーンだ。ここから前後して、第一幕と第二幕に分かれる。
物語がどういう意味を持つのか知るには、全体を4分割した一番最後を見ればよくて、具体的には【10:00】あたりからだ。ここからのシーンで物語は一気に解決へ向かう。
非公式な見解である事を前置きして、この物語のテーマが「旅立つ子とそれを心配する親」とかそんな感じであろう事は明白だと思う。
子供向けの動画作品ではあるのだが、そこに散りばめられた要素は、親の方をターゲットにしているとしか思えない。
物語で注目されるのは主人公達の成長と旅立ちだが、物語のメッセージは彼らを見送る親の方に向けられている。
ユメノツボミの日常
皿洗いを終えた主人公は、母親に旅立ちの許可を得ようとするが断られる。
彼女は旅の相棒としてアテにしているのは、老いたリザードン(ちょろび)だが、父親の相棒である彼は、主人公の言う事は聞かない。
仕方なく、主人公は一人旅立ちを決意する。
彼女は両親がいなくても大丈夫だと母親に言ったが、本当だろうか? それは、彼女が危険な場所に足を踏み入れる事で証明される。
とまあ、説明としてはこれで十分に思えるが、物語の冒頭には設定が詰め込まれている。
開始直後に映る春を連想させる花。街には人とポケモンが共存している。そういう世界観。
また、娘に協力的だが母親の説得に力をかさない父親は何を考えているのだろう?
答えは物語の最終幕で娘に向けたセリフ「冒険に必要なのは、自分だけの夢とパートナーだ」に集約される。(また、パートナーにあたるのはちょろびだけでなく、母親に対してもそうだろう)
何より注目すべきなのは、キャラクターが抱える問題、欠陥だ。
母親曰く、周りの見えない主人公は危なっかしくて心配だと言う。
一方で、最終幕で、娘を送り出した後では違う気持ちを吐露する。
ユメノツボミの第二幕
日常を離れ、危険な場所へ踏み込んだ主人公は森の中で相棒を探す。やたらにあざといピカチュウを発見するが逃してしまう。様々なポケモンに挑むけれど、どれも捕まえられない。
お小遣いの全てをつぎ込みモンスターボールときずぐすりを買っていたのだが、モンスターボールは残り1つに。きずぐすりを買った事を後悔し始める。
また、直後のシーンでは物音に気づいて、野生のニドランを発見する。
(母親からは、周りの事が見えないと評価されるが、彼女が目の前の事しか考えられない人間では無い事がわかる。旅に出るのに不足しているのは能力では無い)
彼らはアーボックに襲われて応戦する。主人公は最後のモンスターボールと、きずぐすりをニドランのために使う。
戦いを終えた主人公は、ニドランを心配することで、母親の気持ちを理解する。
そして、威嚇するニドランの両親が登場したところがミッドポイント。物語は第三幕に移る。
ユメノツボミの第三幕
走って逃げる主人公だが、このシーンは戦いを終えた主人公が帰路につく、という言い方もできる。
当初の目的は果たせていないものの、ニドランとの絆を結び、彼を思いやる気持ちと母親の気持ちの共通点に気づけた。それは旅で手に入れた宝だ。
相棒との友情は、主人公が落とした帽子を拾ったニドランが追いかけて来るというシーンで表現され、怒れる両親が更に追いかけてくるというハプニングも引き起こす。
街に帰ってきた主人公だが、怒れるニドキングと街を守ろうとする市民で戦いが起きてしまう。
事情を知る主人公は戦いを止めようとするが、子供だからという理由で相手にされず、相棒のニドランの叫びも届かない。
主人公はちょろびに協力を頼み、戦いを止める。
ユメノツボミの第四幕
戦いを止めた主人公は、ニドランを親の元に返す。だが、彼らはニドランを主人公に託してその場を去る。
主人公は改めて両親と対峙し、成長した姿を見せる事で冒険に出る許可を得る。
主人公の物語はここで終わってもよいだろう。
しかし、遠のく主人公の背中を見ながら言う母親の言葉はこれまでの物語にはそぐわない。
「もし夢が叶わなかった時、傷ついて欲しくない」
大抵の人の夢は叶わないものだ。だが、それに対する父親の言葉はその場限りの慰めの言葉では無いだろう。
物語の旅は欲しい物を手に入れるために危険な場所に行って、本当に必要な物を持って帰る。
ユメノツボミのキャラクター
第一幕に戻って、回想で母親は「パパがなれなかったのにツボミがチャンピオンになれるわけありません」と言っているが、彼女自身はそのパパに勝っている。
その直前の回想で戦う父親を主人公は応援するが、対戦相手は母親である。
第三幕のラスト付近では「ツボミはパパ似ね」「昔の君みたいだ」と、娘にそれぞれのパートナーの面影を見ている。
キャラクターを表現するのは口にされた言葉だ。
しかし、その人物をより深く表現するのは言わなかった、言えなかった言葉だ。
彼らは旅立とうとする主人公に何をしただろうか? 何もしていないはずはない。
答えは動画内に見る事はできない。視聴者が一人ひとり考えるべきではないかとも思う。
結局、子供は勝手に育つし、旅立つ時が来たなら受け入れるしかないのかもしれない。
今日はここまでにしよう。機会があればまた会おう。