小説講座 とりあえず書く。色々試す。
小説講座なんてやっておいて何だが、俺はとりあえずやってみる派閥に属している。ただし方向性が決まってからだ。
例えば部屋の掃除をする時も、ひとまず、右にある物を左に移す。後から必要な物を戻す。右に左に移動させるうちにエントロピーが収束する。必要な物も必要で無い物も判断せずに、とりあえず移動させる。
そのやり方はあまり効率がいいとは言えず、他のやり方を試そうと思うのだが、結局できない。掃除をはじめるとその、まあ、俺は整理整頓できないタイプだからこれは参考にならない。しかし、考え方としてとりあえず理解してもらえるんじゃないか?
とりあえず始める
組織を動かす上で、これ以上悪い事は無いだろう。
コストの問題だ。戦略を練るのには時間がかかる。行動するにはカロリーを消費する。
だが、実際に動くのが個人なら、期待される成果も少なく、考える為にコストを使い過ぎては破産する。
あれこれ理由をつけて、結局やらないのはもったいない。成果主義に走るのもどうかと思うが、時間は限られている。やるべき理由が一つでもあるならやるべきなのだ。
時間は限られている。やりなれたゲームなら効率よくプレイするのも良かろうが、要領が分からないうちは、気楽に楽しむのが良いだろう。
とりあえず書く
小説を書く絶対のルールという物は存在しないが、日本語を使用するなら、かなりの制約を受ける。
また、現代の価値観を考えると、書く事は限られてくる。エンターテイメント作品にはある程度の法則性があり、集団的無意識がどうのこうのである。
お前が書けないのは選択肢が多すぎるからかもしれないし、逆に絞りすぎているからかもしれない。
書けない奴は、何文字しか書けないとかではなく、初っぱな一文字目が書けないなんて奴も居る。
いいや、普段どれだけたくさん書けてる奴でも、白い紙を睨みつけ、今は書けないと諦めた経験があるはずなのだ。
根性論のススメ
最初におすすめしたいのは根性でなんとかするやり方だ。根性論はよくないと言うが、○○論という奴は相性がある。
根性論だけに頼るのは確かによくない。根本的な問題がある時は、科学的なやり方で対処する必要もある。しかし、やる気がある時は理屈じゃなく根性で歩き初めてしまうのがてっとり早い。
根性論ってのは、人類が用いる理論の中では最も応用が利く理論だ。ただし、他人に強要するとうまくいかない。
とりあえずやってみて、感覚を掴め。
自分の得意なやり方を見つけられればしめた物だが、以前うまくできたのに、今はできないというのは苦しい。
苦しい時は根性論から○○論に切り替える時だ。
自分なりのキャラクター論を考えてみよう。
何を書いていいのか分からない時には単純に考えるといい。
物語は面白さを追求する。その面白さを表現するのはキャラクターだ。
つまり、お前が書く文字はキャラクターに興味を持ってもらうための物なのだ。
キャラクターを理解、共感する事は必須の事だ。
対立が必要なのは、それが興味を持ってもらう一番簡単なやり方だからだ。
対立を意識すれば物語が興味深くなる
お前がリビングで何かしている事を考えてみろ。それを、全国でどれくらいの人が興味を持つだろう?
お前がリビングで何かをしている、その背後で母親が疎ましそうに見ている。
するとどうだろうか。お前がのんきにすればする程、母親の目つきが鋭くなる。第三者の視点から見れば、母親の機嫌が悪いのは明白だが、お前はその母親に対して昼飯は何かと笑顔で聞いた。
俺は母親の事は殆ど何も書いていないが、母親が何に怒っているのか想像がつくんじゃないか? 俺が書いたよりも遙かに具体的に。
それが、興味を持つって事だ。
俺が、母親は父親の浮気に憤っていて、お前を連れてどこか遠くに行こうとしていると言ったらどう思う?
とにかく書けるところから書く
何を書くべきか自信が無い時は「よくある状況」を目指せ。
自分が馴染みのある事なのは前提として、読者の多くが理解、認識できる景色を目指して描写しろ。
俺に言われるまでもなくそうしている奴は多いはずだ。
例えば、目覚めた瞬間から始めるとか。
あるいは、学校が終わって放課後になったとか。
ただ何気なく道を歩く描写かもしれない。
注意点は、よくある状況を書く訳だが、実際に文字にするのは、よくある状況「では無い部分」だ。
目覚めた瞬間なら「いつもより遅い時間だと気付いた」とか「昨日は一睡もできなかったなぜなら……」とか「起きた瞬間ペンを取り、夢日記を付け始めた」とか。
よくある状況のいいところは、少ない文章で伝わるところだ。短い文章ですっきり理解できて、しかも、次のシーンが想像がつく。
書けるところを書いたら、物語を転がす
理解できるシーンを十分描写できたと思ったら次だ。
更に描写を詳しくする事もできるが、必要以上にやるなら何か理由が必要だ。
物語を進展させよう。つまり新しい情報を出すって事だ。
作者がキャラクターに耳打ちして、それを朗読させるような事はしない方がいいだろう。キャラクターは自分からその情報を求める。
キャラクターは誰かからその情報を聞き出したり、あるいは探し出して発見したりする。
よく考えるべきなのは、その情報を読者は理解できるかって事。理解できない情報なら、その事に興味を持ってもらえるかって事。
朝起きたシーンの次に何を書くか。まさか、朝起きるシーンを書きたかった訳じゃ無いだろうから、実際は朝起きたシーンは、その次の情報を出す為に書いた事を覚えておけ。
今日から夏休みだって情報を出してもいいが、それは行動の指針が示されず、スリルの無い宙ぶらりんな展開で、物足りない。工夫が必要。
どんな工夫か? 例えば、キャラクターに興味を持ってもらう工夫だ。
主人公には特別な力があったり、特別な立場にあるのかもしれない。それが描写できれば興味を持ってもらえるだろう。
窓から美少女が飛び込んできて、首から光る石を下げているかもしれない。彼女を保護する事で物語が始まりそうだが、最終的に天空の城を目指す話は書き辛い。
単に警察が玄関に来ている事を知ってもいい。説明無しに主人公がPCのHDを電子レンジに突っ込んでチンして、ベランダから隣のアパートに飛び移ったら、たぶん興味を引けるだろう。
キャラクターの幸運・不幸、特徴などを考えよう。どう表現するかが重要だ。
とにかくやり方をいろいろ試してみるといいだろう。
自分に合ったやり方を探せ。考え方を変えろ。
たとえば、物語の形を意識した事はあるだろうか。
丸い形の物語はテンポよく進むが、加速するのが早すぎて、変速するのにコツがいる。
楕円の物語は勢いがつけばよく回る。物語を進めるのにはエネルギーがいるかもしれないが、ある一点を越えると、ごろん、と転がる。
楕円を更にのばして長方形に近い形の物語は、最初の山場を迎えるまでは大変かもしれないが、一気に加速する。
これらは構成と、リズムとテンポの話だ。論理だった言葉より、イメージの方が理解に役立つ事もある。
今日もしゃべりすぎた書けなくなったらまた会おう。